君との距離は3yard 【アイシールド21長編R18物語】
第3章 恐れ
〜Narrator side〜
波音を知らない1年は殆ど驚きを隠せていなかった。
ヒル魔「…やるじゃねぇか、糞アマ。」
「瞬発力は日頃の練習で鍛えられていたからね、」
モン太「すっげぇ…ヒル魔さんのボールを片手で取っちゃう人がいるなんて珍しい…。」
ヒル魔「利き手だから余裕だったか。」
「まぁな。…こんなもんさ。」
何気無い会話のように聞こえるが、波音の手は震えていた。中学時代はヒル魔のボールを普通に片手で止められたが、突き指をするのを恐れていただけに念の為両手使わないと不安になるのだ。
「まもりさん、大丈夫か?」
姉崎「え、えぇ…私は平気。波音ちゃんは?」
「私は平気!ほら、バリバリ動くよ!」
左腕をブンブンと振り回す彼女。皆、呆気に取られる。
なるほど。こういう性格なのか、ときっと把握したのだろう。
姉崎「そ、それなら良かった…。」
まもりも元気よく左腕を振り回す彼女を見て若干引いていたのだった。
──────
右腕が痛む。
本当は治ったはずなのに。
そもそもこんな腕になってしまった原因は自分にある。
皆が帰った後、誰もいない部室に訪れた波音は中に入ると痛む右腕をぐっと押さえる。
「ぐうっ…!」
治っても襲ってくる鋭い痛み。
その痛みに耐えるために彼女はずっと包帯を巻いていた。