君との距離は3yard 【アイシールド21長編R18物語】
第14章 『天才とは努力する凡才のことである』
「波音ちゃーん!すぐに抽選会から出ていったから心配したよー!」
栗田が少し涙目になり波音を抱き締めた。
「ぐ、ぐるし…」
苦しくて栗田のお腹を殴る彼女に、2人の女性は面白そうに笑っていた。
「おめーら、美水女子か。」
ヒル魔が話し掛ける。怯えることもなく、2人は頷く。
「美水女子高校2年。僕は城ヶ崎いずみさ。」
「…」
男装の麗人と言うべきだろうか。
楓もご挨拶しな、と言われて少し怪訝そうにするのは髪の長い女性。
「…蓮見楓よ。…波音が迷惑掛けてるみたいね。」
(こいつら、糞アマのダチか。)
この2人と話していた波音はヒル魔が見た事ない無邪気な笑顔だった。
「波音と仲良いんだな。」
ムサシが口角を上げて話す。決して悪い雰囲気ではなかったからだろう。
「僕達はあの子の親友ですから。」
「…私は親友になった覚えは無いけど。」
「そんなこと言って、波音が右腕を怪我した時に学校をサボってまで病院に行こうとしてたのはどこのどいつだい?」
「…煩いわね。べらべらと喋らないで。」
緩やかな微笑みを浮かべる城ヶ崎と眉を寄せる蓮見。
栗田から開放された波音が、目の光を取り戻したかのように美水女子の2人を抱きしめる。
「2人に…2人に会いたかった…!」
そして、突然泣き出す彼女に城ヶ崎と蓮見を含め、一同驚いた顔をしていた。