第1章 再会
霜眞は1人だけ、無邪気に喜んでいた。
男子'sは霜眞に相応しいかどうかではなく、男としてのプライドが崩れ落ちたのでこの世の終わりかと言うような顔で各々ジャングルジムを降りた。勝利に満足し、颯爽と降りていく霜眞に皆目を奪われる。
あんな風にカッコよく降りられたらな…と。
いや、先程見せられたように運動能力が違いすぎるので安全第一を心がける。だがその直後、園児の1人が手をすべらせてしまったのだ。
「危ない!!!!」
先生がいる距離からでは間に合わず、万事休すかに思えた。ドスッという落下音は、何かが衝撃を吸収している音に聴こえた。
「うっ……げほっごほっ…」
なんと霜眞が仰向けになって、落ちた園児を受け止めていたのだ。先生がすぐに駆け寄って2人に外傷がないか確認する。落ちた園児は霜眞がクッションになり無傷で済んだが、彼女は膝や肘に擦り傷を負っていた。
「龍之介くん霜眞ちゃん、大丈夫?痛くない?」
落ちた園児は、田中龍之介本人。霜眞は手を滑らせた田中を誰よりも早く見つけ、飛び込み前転をしつつ彼の背中と地面の隙間に入ったのだ。勢いとスピードが強かったため、膝と肘に擦り傷を負ったのである。
「そーまいたくないよ。ひりひりするだけ。りゅーちゃんはだいじょーぶ?」
「……してくれ(ぼそっ)」
「?」
「おれと"けっこん"してくれ!!」
「…あたまうった?」
「そーまのおっぱいにうった!!」
「っ/////りゅーちゃんのえっち!」
パチィンと頬を叩く音が小気味良く響いた。
「そ、霜眞ちゃん!?お友達を叩いちゃダメでしょ!!」
「…だってりゅーちゃんがへんなことゆーんだもん…」
「ん〜…確かに龍之介くんの言い方はストレートすぎたかもしれないけど、手をだしちゃダメ。」
「はぁ〜い……りゅーちゃんごめんなさい…」
「でも霜眞ちゃんすごいね。先生よりも早く龍之介くんを助けちゃうんだもん。すっごくカッコよかったよ!!」
「ありがとせんせー!やっぱりジャングルジムってあぶないから、みんながおちてもたすけられるように、そーまがんばったの!」
満面の笑顔で答える園児。いや考え方達観しすぎだろこの子。しかも有言実行してるから恐ろしいわ…。
将来ヒーローになるんじゃないかしら…。と本気で考える先生であった。