第1章 俺の帰り道。
SPLAAASH!!
その一瞬に何が起きたのか、きっと誰にも分からなかっただろう。
彼女の捻った蛇口からは、信じられない勢いで、水が噴射されたのだ。
水はそのまま彼女の顔を直撃!
そして、今なお顔を直撃し続けている。
瀬呂は吹き出さずにはいられなかった。
いやどういう状況だと。
美人なのに、と。
そして、声をかけずにもいられなかった。
ヒーローのタマゴとして。
ヒーローを志す人間として。
「おいおい!水止めろって!!」
ブシャーー!!と何処ぞの妖精ばりに発射し続ける蛇口を慌てて閉めて、瀬呂は声をかける。
水の中から現れた彼女はやはり綺麗で、瀬呂はまたハッと息を漏らす。
水も滴る、いい…女?
(物理的に)水が滴っている彼女は、またも美しく見えた。
ぼーっとしていた彼女は顔を上げ、それからマイペースに
「ありがとう。」
と呟いた。
声は普通の女の子。
その声を聞いて、瀬呂はハッと気が付きワタワタと動き始める。
「風邪ひくぞ!早く拭かないと!」
「そうね。」
彼女はカバンからハンカチを取り出しぽんぽんと体を吹き始める。
そのマイペースさたるや。
今までに見たことがないほどだった。