第1章 俺の帰り道。
空が赤に染まっていく。
夜の帳が下り始める。
ねぐらに帰るカラスがカーと鳴く。
そんないつもの夕暮れに、
雄英高校の地味な生徒、瀬呂範太は一人歩いていた。
今日の実習疲れたなとか、腹減ったなとか、そんな普通の男子高校生の思考回路で適当な言葉を垂れ流しながら、
駅までの道を一人ぷらぷらと。
いつもの友達はこちらには来ない。
でも瀬呂は元来一人でいるのは嫌いではなかったし、ぷらぷら歩くのも好きだった。
そんな地味で普通な瀬呂くんは、今日は偶然、たまたまフッと駅前の公園を見た。
特に意味は無い。
小さい子供が帰り道に白線の上を歩いてしまうような、それくらい意味の無いこと。
しかし、その時のその行動は、瀬呂の運命を大きく変えるものだった。
フッと見たその公園の中には、月のように美しい少女が居て。
物憂げに伏せた目には長いまつげが影を作って。
ツンと整った鼻に薄い唇があって。
これ以上ないほど綺麗にセーラー服を着こなして、長く綺麗な髪を揺らして。
瀬呂はハッと目を奪われて、彼女の動向を見守ってしまった。
彼女はフラフラと公園内を歩いて給水所へ向かっていた。
その覚束無い足に不安を抱き、瀬呂はますます目に力を込めた。
彼女はやっと給水所へ辿り着き、そして細く美しい指で蛇口を捻った。
……までは、美しかったのだが。