第2章 私の人間関係。
「ま、まぁいいけどよ。尊敬…とかもしなくていいぜ?同じ普通の高校生として見てくれたら一番だよ。」
「そうね。じゃあそうするわ。」
涼し気な顔をして、彼女は言う。
前には走り回る子供。絵に書いたような穏やかな午後だ。
心地の良い沈黙が少しだけ続いて、それから瀬呂はぽつりと口を開く。
「そういや望月、友達は?」
「いないわ。」
それまで心地のよかった空気が凍りついたように、瀬呂は感じた。
虚しさの象徴のようなカラスの鳴き声がカーと響く。
「え、なんか…わりぃ…。」
「別にいいわ。」
もういっちょ、カーカーとカラス。
それから彼女はまたマイペースに言葉を続ける。
「女の子達は私を思いっきり敵視するか、敬遠するか。男子生徒も敬遠するか、性的な目で見るか。友達なんてできないわよ。でも結構どうでもいいと思ってるから。」
「お、おぉ……。なんか…顔が綺麗ってのも考えもんだな。」
彼女の結構壮絶な人生を聞き、瀬呂は冷や汗を垂らした。
「瀬呂くんは……いるのよね。」
「あぁ、まぁ…」
「…羨ましいわ。」
彼女は目を伏せて、いつものけだるげな顔ではなく、悲しげな顔をした。
そんな顔を、瀬呂は初めて見た気がした。