第2章 私の人間関係。
「ちなみに“ドュクシ”をする時はこうよ。」
彼女は手を胸の前で構え、指を前に向ける。
「うん…。」
「こうよっふっ」
突き出した指をそのまま前に、目にもとまらぬ速さで突き出す。
“ドュクシ”という効果音とともに。
「うん。それはなんとなく知ってた。」
小学生の時、一度は見たことあるそれを目の前で披露された瀬呂は、困惑を隠せなかった。
「あらそうなの。やっぱりこういうの、雄英でも流行って」
「いや、それは無い。」
「無いのね。」
つまらないわ、とふいと前を向く彼女に、瀬呂は少しだけいらりとする。
「さすが、偏差値70超えの進学校…と言ったところかしら。頭のできが違うのね。」
そんな言われ方にも、いらり。
雄英高校は偏差値70超えの超進学校。
誰もが憧れて、倍率はいつもとんでもないものとなる。
そんな高校に入れたなんて奇跡だと、瀬呂は思っている。
そんな高校の生徒であることに誇りは持っているのだが、そんな言われ方をすると、なんだかムッとする。
「偏差値なんて関係ねぇよ。みんな良い奴だし、多分普通の高校生だって。そうやって偏差値とかで判断されるの、好きじゃない。」
そうやって少しだけ棘のある言い方をすると、彼女はハッと顔を上げ、申し訳なさそうな顔をした。
ちゃんと礼儀は正しいようで。
「あ……ごめんなさい。棘のある言い方しちゃったわね。私は雄英高校の生徒を尊敬しているし、貶すつもりなんてこれっぽっちもないわ。誤解したかしら?」
と、瀬呂の顔を心配そうに覗き込む。
そんな顔に、瀬呂の心臓はまたどきゅんと高鳴る。
これだから美人は、と。