第3章 漆黒色の砂は、毒と嘯く※
「パーティ?」
「あぁ、商売絡みの裏情報を取引する場だ」
クロコダイルはゆっくりと葉巻に手をやった。
この男の目論みは分からない。
クロコダイルにとって、今の私に利用価値があるだろうか。
頂上戦争で救いの手を差し伸べた麦わらの一味に危害を加えることは考えにくいし、海軍に見つかることは避けたいはずだ。
私にとっては、ログが溜まるまでの時間潰しと、外部からの情報を得る貴重な機会が得られる点で利がある。
特に外から見た海軍の情勢は知っておいて損はない。
「私にはメリットがありそうな場だ。しかし、お前には何の得がある」
クロコダイルはにやりとすると、決まりだなと言った。
「いい女を連れ歩くのに理由が必要か?」
「お前のような男が、打算なしに行動するはずがない」
「買いかぶりすぎだ」
鍵爪で顎先を持ち上げられると、ひんやりとした感触が広がった。
「お前を連れているだけで俺には利がある。不服か?」
*
パーティは当然正装しなくてはならないため、ヘアセットやメイク、ドレスの用意などを施してもらった。
クロコダイルは私の身支度をさせるために配下の女たちを呼びつけると、xxxxと分からないようにしろ、と一つだけ注文をつけた。
私も始めから変装するつもりでいたが、それはクロコダイルも承知のことだったようだ。
女たちは慣れた手付きで手際よく支度をしてくれた。
全てが終わった頃クロコダイルが迎えに訪れ、私を見るや否や満足そうに笑った。
「クハハハ!想像以上の仕上がりだ、xxxx」
こんなに美しい方をご準備したことはありません、社長のお見立て通りですと女たちが口々に褒め湛える。
「当然だ、いい女に飾りは必要ねェ。xxxx、行くぞ」
クロコダイルは腕を差し出し、掴まるよう促した。
*
会場は廃墟街中心部にある大きな建物で、その出で立ちから元々は高級ホテルだった様子が伺える。
広々としたパーティルームの一室だけは煌びやかに飾り立てられ、当時のままのように感じられた。
ホールの人々も華やかに正装し、一見社交的な会話をしているようで、とても裏稼業の輩には見えない。
クロコダイルにエスコートされてホールを歩くと、周囲がざわめき出した。
クロコダイルは今も注目人物のようで、当然、その横に付き従う私にも視線が浴びせられた。