第3章 漆黒色の砂は、毒と嘯く※
「久しぶりだな、xxxx」
「クロコダイル…」
かつてアラバスタでやり合ったこの男、クロコダイルは、相変わらず不敵な笑みを浮かべて、圧倒的な威圧感を放ち私を見つめた。
インぺルタウンを脱獄し、頂上戦争後どさくさに紛れて行方を眩ませていた海賊の一人だ。
「ちゃっかり七武海の椅子に座っているようだなァxxxx。俺を捕獲する任務でも請け負ったか?」
「お前に用はない、放せ」
「クハハハハ、その言い草、変わらねェな」
クロコダイルは鍵爪を力いっぱい引き寄せ、強引に私の腰を抱く。
「お前と争う気はねェ、知った顔が見えたから覗きに来ただけだ」
「何…?」
「どうせログが溜まるまで暇なんだろう、少し俺に付き合え」
こちらの事情を知っているかのように言い放つと、再び砂化して私を連れ去った。
*
クロコダイルに抱えられて、高層ビルの一室に到着した。
廃墟のような外観とは裏腹に、内装は綺麗に整備されている。
繊細な刺繍の絨毯と品の良い家具がセンス良く配置され、豪華な社長室を思わせる部屋だ。
「隣島の鎮圧に来たのだろう?そこに俺が武器を横流ししている」
クロコダイルはキャビネットの傍で酒を注ぎながら言った。
この男がここにいたことで粗方想像はついたが、廃墟となったビル群一帯は、クロコダイルのような輩が裏で商売をする拠点となっているのだろう。
各地で暴動が起きている今、武器や資材、人などといった戦力はよく売れる。
この男は元々巨大組織の経営者。
また一から財を築きながら、機を伺っているに違いない。
「商売の邪魔をするなと言いたいのか?」
「いや、この商売は一か所に長居しすぎると足が付く。海軍も来ちまったことだし、潮時だ」
私にグラスを渡すと、酒を注いだ。
「じゃあ何だ、退屈しのぎに昔話にでも?」
「クハハハハ、それもいいな」
促されてグラスを合わせると、それを一気に飲み干す。
独特の苦さの中に深い甘みのある酒だ。
クロコダイルとアラバスタで敵対したことも、頂上戦争で助けられたことも事実。
かつてルフィと戦った海賊たちとは、奇妙な運命に導かれる。
「今夜このエリアで裏社会の輩を集めたパーティがある。俺に同伴しろ」