第2章 大人になって①
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ふう。そろそろいいかな。
なんて考えながら、廊下を通ってる時うっすらと声が聞こえた
「あ…うん、その段取りでいいよ」
よく聞いたことある、この声
「楽しみだなあ、…っはは、そこは大丈夫だよ。」
弾むような口調から、楽しそうな雰囲気が伝わって来る。相手の声が聞こえないことから推測するに、どうやら、電話をしているようだ。
「じゃあまた、うん。うん。わかってるって…じゃあまたね。」
「デクくん?」
「ひぇ?!あ、う、うら…らかさん!」
背後から声をかけたのが悪かったのか、思いの外驚かれてしまった。
「電話?なんかすごい楽しそうやん〜なんかいいことあったんですか〜」
肘でくいくいとつっつくと、照れながらやめてよ〜っと笑う。なんだか学生に戻った気分だった。彼は髪の毛をかくしぐさをしながら少し視線を逸らした。
「結婚することになったんだ。」
「けっ…こ…?」
頭を鉄砲で撃ち抜かれたかのような衝撃が走る。そのあと、きっといつ頃挙式をあげるとか、きっと話してたんだろうけど、何にも頭に入って来ん。入れたくないという拒否反応からか、深い穴に落ちてしまったような感覚になる。結婚???
ケッコン????
いや、いや落ち着けお茶子。普通だよ、もう私たちは子供じゃない。学生でもない。大人になってしまったんだ。私の知らない、デクくんがおるんか。
自分に言い聞かせながら自分と会話する。あかん、頭が働かない。
誰と?
いつ?
私の知ってる人??
「ええーこのこのっ!幸せ者め、おめでとう!!」
酔いで回らない頭を必死に回転させて、言葉を絞り出した。きっと間違ってないはず。
私今、どんな顔してるんやろう。
ちゃんと、わら、えてる…かな。
そう言い放つと、足が勝手に広間に向かう。逃げたい、ここから今すぐ。
「じゃあ、そろそろ戻るわ〜また今度詳しく聞かせてよ?」
「えあの???? うららかさ…」
呼び止められたような気がしたが、聞こえないふりして広間に駆け込んだ。さっきは逃げてきたのに、おかしいな。今はここが逃げ場みたい。
大丈夫大丈夫、笑えてる笑えてる!!!
大丈夫。