第2章 大人になって①
「店のノウハウは経営科出身の子が僕の事務所にいるから、協力してもらって…前の従業員の人達も、お店潰れちゃうってなったら困るでしょ?だから、丁度いいんじゃないかって!」
ズビ〜っと音がするので何事かと振り向くと、飯田くんが鼻をかんで泣いていた。いや、まだ早いでしょ!涙腺!!!!と突っ込むのをぐっとこらえる。
「そして、前の店主と色々話し合って…どうせなら色々リフォームしようってなってさ、色々2人で案出し合ってたら、このお店が完成したんだ!」
パッと手が上がる。挙手制の質問形式のようだ。どうぞっとデクくんが指す。
「えっと、お金はどこから出たの?経営不振だったのに…?」
意外にも耳郎からの質問だった。
「実は、事務所からなんだ。新しい事業の一環として!雑誌とかにも取り上げてもらう予定なんだよ。」
デクくんは少し嬉しそうに笑ってみせる
「あー、でも僕が開いたっていうと大げさだね。皆んなで開いたというか、僕はヒーロー活動が、喜ばしくも忙しいから暇ができたときに、パトロールがてらに顔出したり、オフの日に手伝ってるんだ!」
「これが真相というか、なんていうか、こういうことで…他には何か質問…あったりする?できる限り答えるから!」
一通り話し合えたようで、デクくんはビールを喉に入れる。
サッと手が上がる方を見ると、またもや意外な轟くんだった。
「料理のオススメは、何かあるのか?」
微笑みながら問うその表情は、テレビで見る轟くんとは少し違ってて。穏やかで優しい顔だった。
場がシリアスモードから一気にホンワカする。
和らげようとしてくれたんだろうか、轟くんがデクくんに対してのおつかれ様、頑張ったな。という気持ちが伝わる。
「だし巻き卵、だよ!」
デクくんがそう笑うと、切島が目をウルウルとしながらだし巻き卵オナシャス!!!と叫ぶのであった。
相変わらず、優しいなあデクくんは。
人のためにここまでできるなんて、かなわんなっと笑みがこぼれる。
「素晴らしい、素晴らしいよ緑谷くん!」
ブラーボ!ブラーボ!!と飯田くんが手を叩きながら泣く姿にA組らしさを感じた気がした。
広間は再び、思い出話に花が咲くのだった。