第2章 大人になって①
みんなに飲み物が行き渡ったころ、切島君がおっほんと咳払いをする。
「皆んな、飲み物揃ったか?えー、えっと。おっほん!!!じゃあ、今日は急なお誘いなのにこんなに人数集まるなんて、すげえ嬉しかった!時間の許す限り、楽しもうぜ!乾杯!」
「「「かんぱーーーい!!!!」」」
合図とともに皆んなでジョッキを鳴らす。
プハーーーっと一口目を堪能した声を漏らすと、さてとっと言うようにみんながデク君を向く。
「まず、お前から色々話してくれよ、じゃなきゃ質問しかねえからな」
笑いながら瀬呂が問うと、そうだね…とデクくんは立ち上がるとともに残りのビールを一気に飲み干す。
いいのみっぷり!と峰田から拍手が起こる。
裏でこっそり、切島くんがビールもう一個と注文しているのが目に入る。さすがだと感心してしまう。
「えっと。まず何から話せばいいかな。…たくさんあるんだけど。」
頭をパリパリとかきながら空ジョッキを机に置く。
「僕がこの間、立てこもり事件で救助した子のお見舞いに行ったんだ。そしたらその子と仲良くなってね。お家、もともと居酒屋してることを知ったんだ」
少しブツブツ呟いたあとだったが、はっきりとした口調で話し始めた。
「でも、経営不振で…お店の存続の危機になっちゃっててね。そんな時に、その子のお父さん…えっと店主だった人が、倒れちゃって。」
2つ目のビールが切島くんからデクくんに渡されるとありがとう、と素直に受け取った。
「でもなんとかしてお母さんとその子で店を回そうって時に、店に強盗が入って立てこもりが起きたようでね。最後犯人はお店に火をつけたんだ…幸い、皆んな怪我は軽傷で済んだんだけど。お金も厨房も全焼。もう店は無理だろうってなったみたい。僕、くやしくって。許せなくって」
拳をぎゅっと握りしめる。表情も少し歪んでるようだった。
「そんな時、僕の事務所が新しい事業を展開したいって話が出たんだ。色々案は出てたんだけどね。そこでピンときた!」
ぱあっと表情を明るくした。
「この店、やり直せないかなって!!」