第2章 大人になって①
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正直、最初は誰かわからなかった
すれ違いざまに、パッと手を掴まれたから、
思わずヴィランかと反射的にバッと振りほどいてしまった
後ろを振り返ると
パチクリとした目にしっかり捉えられた
「やっぱり!!!爆豪くんや!!!!!」
声の主は自分のよく知っている相手。
あの頃より色ついた唇に、
あの頃より伸びてさらっと下ろした髪
あの頃よりムチムチとした体つきは少し細くなって
あの頃より丸顔ではなくなった、丸い輪郭
「まるが‥お?」
“丸顔”こと麗日お茶子が両手をブンブンと振りながら嬉しそうに声をかけてきた。
「久しぶりやなあ、爆豪くん〜!!卒業以来よね??元気しとった??わあ、爆豪君でもショッピングモールとか来るんや!!何を買いに来たん?お邪魔していい??」
テンションの、上がったお茶子は爆豪の返事を待たずにたくさんの疑問文を投げつける
「あああうっっっせえわ!1つの会話に疑問文入れすぎなんだよ!!!!」
「だってえ」
お茶子は子供のようないたずらな笑顔を見せた
まるでこのマシンガントークはこのツッコミを待っていたかのような、そんな風にも捉えられる。
昔からこいつが笑うと、周りの空気が麗日になる、気がする。
「久しぶりにみんなに会えるのが、すっごい楽しみやったんやもん!!」
ニカッと笑う笑顔がすごく可愛い、と感じたことが悔しいのか
爆豪はパッと目をそらしながら
「俺だってショッピングモールくらい来るわ、何だと思っとんだ。」
と素っ気なく答える。
「お前と違って俺は忙しいんだよ!」
の一言も付け加えてやったが、
お茶子はそんなことに全く動じるそぶりを見せず、子犬のように後をついて行くのだった。