第7章 事件のすべて
「君は僕がいらないというのかい?リリー、君は変わってしまったよ…」
「どうしてそんなことが言えるの…私はあなたとの子も、妻としての義務も女としての価値も何もかも失ったのに…どうして!そんなに軽々しく言えるのよ!」
私の気持ちはその時に全て爆発した
「私は!あなたの奴隷じゃないのよ…!どうして妻として、女として見てくれないのよ!」
何もかもが嫌になった
言いたいことが全て自然と出ていく
「っ…僕の知っているリリーはどこに行ったの?君は誰なんだい?」
ジョージは私の顔を伺い始めた
「何言ってるのよ…変わったのはあなたじゃない…!」
「こんなの…リリーじゃない!お前は誰なんだ!リリーは僕のことを素直に聞いてくれるいい子なんだ!お前は口答えばかりの悪い子だ…!」
人が代わったように言うジョージの姿は怖かった
「ちょっと…ジョージ?」
「リリー…ごめん!僕、取り乱して…」
「いいわよ…私も言いすぎたわ…」
「いや…僕こそだよ…ごめん。頭を冷やすよ」
彼は人格が変わったのように唐突に落ち着きシャワーへ向かっていった
けれどあの日から帰ってこない事が多くなった
私の寂しさは相変わらず増してゆく一方で
いつも昼に宅配をしてくれる若い彼に出会った
愛らしく笑う顔はなんと言っても可愛く、彼は頬を赤らめて私に近づいてくる
ハリーとの体の関係を持った私は、本来の女の姿を取り戻した
「これは内緒よ?うふ」
「はぁはぁ…はい。でも奥さんは僕のものですよ?…」
「あら、そんなこと言うのは早いんじゃないの?」
「僕ならあなたを幸せにしてみせるのに…奥さんとなら」
「んふ、嬉しいわそんなこと言って貰えるなんて」
幾度もお昼に出会っては体を密着させて絡めた
「今日もありがとう」
「いえ、毎日ここへ来て奥さんを寂しい思いなんてさせませんよ」
「んふふ、また明日ね」
昼はハリーと密会、夜はジャック
そんな密会を続ける日々が増えていった