第17章 two faces〜2つの顔を持つ復讐者〜【荼毘/切甘】
『……最後の質問、荼毘はいつからヴィランになったの?』
「それ答える必要あるのか?」
『答えて、じゃなきゃ私荼毘と一緒にアジトに戻れないっ!』
私は、質問に明確な答えを出さない荼毘を両親の仇だという風に確信し脇差を抜いて荼毘に切っ先を向ける。
「……そうかお前ヒーローに両親を殺された復讐者とかブローカーが言ってたけど本当は」
『その通り、私の両親はヴィランに殺された!いや、あなたに殺されたっ!!』
私は脇差を荼毘に振りかざすが荼毘は青い炎でガードした
すかさず液体化して炎を回避し、荼毘の背後に回り彼の背中に脇差を突き刺す。
「っぐぁあ!」
振り向きざまに炎を纏った手で牽制してきたのをバク転で避ける。
構え直して脇差を持つ手に力を込めて呼吸を整える。
「お前、ヴィランに両親殺されたのに自分もヴィランになってる時点で仇と立場一緒だってことに気づかねぇの?」
コツコツとゆっくり私に歩み寄る荼毘に警戒する。
『……私はっ!ヴィランなんかじゃ無いっっっ!!うぁぁぁあぁぁぁぁあ!』
無我夢中で脇差を振り、斬撃を繰り返す。
荼毘は後ろに下がりながら素手で峰の部分だけを掴みいなして弾く。
荼毘の背が壁についたときチャンスだと思って振り上げた脇差は荼毘の顔に突き刺さることなく耳スレスレの壁に突き刺さる
荼毘の耳元の黒髪が数センチはらはらと地面に落ちる
「……どうした?殺さねぇのか?俺はお前の親の仇なんだろ?」
『……分からなく、なってきちゃった。荼毘、避けれる私の攻撃も全然避けようとしないし炎も必要最低限しか使わない』
壁に突き刺さる脇差から手を離し、私はその場に崩れ落ちる
『けどそれは、私に殺されてもいいと思ってるから…殺されるだけのことをしたっていう自覚があるから抵抗しないの?
私、荼毘が分からないよっ…』
その場で座り込んで啜り泣く私を前に荼毘はしゃがんで私を抱きしめた。
『………荼毘?』
「…俺は、つい最近ヴィラン連合入った。それまではステインの思想に憧れてはいたけど何も罪は犯してねぇ」
荼毘は、仇じゃない……
『……なんだ、仇じゃなかったのね。じゃあ何でっ!何で…』
「惚れた女黒焦げにするわけねぇだろ。お前の痛みを分かってやりたかったから避けなかった。
帰るぞ、時期にここにも警察やヒーローが来るはずだ」