第32章 あぁ、これが恋の魔法ね【切島鋭児郎/裏】
初めてだった。
私にそんなことを言ってくれる人は…
私の頬には気づいたら涙が伝っていて切島くんを抱きしめていた
足りない心のピースを埋めてくれる人…
彼がそういう存在になってくれるのかもしれないと淡い期待を寄せた。
その日はそれ以上何もなかった。
「もう18時か、長居して悪かったな俺そろそろ帰るな」
荷物を片付けて切島くんは帰り支度をして玄関まで歩く彼を私は後ろから抱きしめる。
『………行かないで』
抱きしめる私を身体から離し、正面を向き直る
「…そういうわけにもいかねぇよ、親御さんそろそろ帰ってくるだろうし俺も帰らないと親に心配される」
『………お願い』
「大丈夫だ、また来るから」
そう言って私の頭を撫でて、帰ってしまった。
次の日、学校の昼休みに切島くんはいつも一緒にいる男友達とご飯を食べていた。
「切島〜お前高橋の家に行ったんだってな!」
「あぁ、行ったけど」
「どうだった?高橋やっぱテクニシャンなのか?」
「校内一のビッチだからやっぱ
「お前らやめろよ!!」
切島くんは自分の机をダン!と力強く叩いて叫んだ。
「高橋を噂だけでそういう目で見るな!偏見で物事を語るな!!昨日俺は高橋の家に行ったけどお前らが想像してるような事は一切してねぇ!!
今度そんなこと言ったらお前らとは絶交するからな!!」
クラス中がシーンと静まり返ったあと切島くんの友達2人がポツポツと、ごめん…悪かったと呟いて切島くんは席に座り直してお弁当の残りを食べていた。
正直切島くんの怒ってるとこを初めて見てびっくりした。
でも、私なんかのために大事な友達に怒ってくれる彼を見て私は少し嬉しかった。
席を立ってクラスを出る途中、切島くんの席の後ろを通って『切島くん、ありがとう』と言うと彼は「お礼なんて言うなよ、コイツらの言ったこと…本当にごめんな」と謝っていた。
『良いよ自分の撒いた種だから』
そう言ってクラスを出て行った瞬間女子達から
「何あれ感じ悪っ!」
「切島もなんであんなビッチ庇うの?」
等の言葉が聞こえるか聞こえないかくらいで飛び交っていた。