第29章 敵は味方のふりをして近づいてくる【義爛/シリアス】
借用書の束の中から私は見つけてしまった。
『!?……これっ』
そう、借用書の束の中から1枚…私の名前と個人情報が書かれた紙が入っていた。
『私の顔と個人情報でも…借金してたなんてっ!』
よくよく考えてみたら、私のデータが使われるのは必然だった。
同じ事務所で働いていた頃から彼は私につきまとっていて、無理やり過剰なスキンシップをしたり個人情報を聞き出したりしていた
私に化けるのに必要なデータはメイキングには全て整っていたのだから。
他の借用書もよく見ていくと、メイキングの事を好きだと言っていたポップスタンプの名前の借用書やポップスタンプといつも一緒にいた女の先輩の名前の借用書、事務所の社長の名前の借用書まであった。
『……なにこれ、事務所にいた人達全員の名前で……』
「なぁんだ、もうバレちゃったのか」
部屋のドアから聞こえてきた声に振り向くと、そこには仕事に行っているはずのメイキングがいた。
『………メイキング、先輩…なんでっ…』
「なんかここ最近視線感じるって俺言ってたじゃん?そのうち今日のはなんかいつもと少し違う感じがしてさ〜
楓ちゃんも俺のこと怪しんでたから楓ちゃんがちゃんとお留守番できてるか見にきたんだよ
そしたら借用書やら何やら俺の部屋で広げてくれちゃってるからさ…びっくりしちゃったよ」
『びっくりしたのは私の方です。私や元職場の人達の姿でも借金していただなんて…』
「ははは、ごめんごめん…でもまぁこれを知られたからにはもう君との契約は解除だ。死んでもらう。」
メイキングは自分のジャケットの内ポケットから拳銃を取り出して弾を装填し、私の額に銃口を突きつける。
私は恐怖のあまり涙を流しながらグッと目を瞑った。