第29章 敵は味方のふりをして近づいてくる【義爛/シリアス】
『…成る程、でもなんでメイキング先輩は私をボディーガードにしたんだろう?』
「あくまで推測だが、闇金関係者が自分の留守中に家に侵入してくるのを防ぐためにあんたを家に置いてる可能性は高いな。
それにメイキングは闇金にかなりの金額を借りてて担保に自分の臓器を掛けたらしいから…
恐らくあんたの臓器を自分の臓器だと偽って渡すつもりでいると思う。」
『そんなっ…ど、どうすれば…あの家にいたら私っ…』
義爛はタバコの煙を口から吐いてウエイトレスが持ってきたコーヒーを受け取り、口に少し流し込む。
「落ち着け、とりあえずあんたはアイツが帰ってくる場所を知っている唯一の手がかりなんだ。今日はこれを持って家に帰れ」
そう言って義爛が渡したものは
『…小型の発信機と盗聴器?』
「これであんたの居場所と会話の内容を俺も把握できるからいざという時は助けに行ける。ただし、これをメイキングに見つからないように気をつけろよ」
『分かった、ありがとう』
飲み物を飲み終わって義爛と喫茶店を出たところで別れて家へと歩き出した。
自分の臓器の替え玉として私の臓器を売り飛ばす気でいる…
本物の義爛からそう聞いた私は家へ帰って早速メイキングの部屋を漁った。
本物の義爛が言ったことが本当なのか確かめるため物的証拠を探す。
メイキングの部屋を漁ってものの数分で借用書と担保について書かれてる書類やらが十数枚出てきた。
その書類に書かれている名前やデータはメイキングのものが一枚、それ以外は全部別人の名前やデータが書いてあった。
恐らくこういう事だ。
彼は義爛(紹介人)と初見の客の一人二役をやって別人として闇金から金を借りていたのだ。
だから普段は義爛の格好でいて、仕事の時だけメイクアップヒーローのメイキングに戻る。
そして、初見の客として金を借りに行くときは別の人間の顔とデータを借りる。
そういうことを繰り返していた事をこの借用書が物語っていた。