第29章 敵は味方のふりをして近づいてくる【義爛/シリアス】
メイキングがいきなり後ろを振り返った。
咄嗟のことで私が動けないでいると、義爛は私の腕を引いて近くの喫茶店へ入る。
メイキングは数秒あたりを見回したあと、前を向き直ってまた歩き出した。
「………行ったか」
喫茶店の窓から、外にいるメイキングが歩き出すのを確認した。
私が、尾行を続行するため外に出ようとすると義爛に
「今日はもうやめとけ、次は確実に見つかる」
と言われた。
「……あんたにはいろいろ聞きたいこともある、俺とここで少し話をしねぇか?」
『構わないよ、あたしもあなたにいろいろ聞きたいことあるし』
私達は席についてメニューを開く。
義爛はコーヒーを頼み、私はオレンジジュースを頼んだ。
注文し終えると義爛がなんで俺の名前を知っていたのかと聞いてきたから私は3日前の夜から今までの事を全て話した。
「…成る程な、それで偽物の俺のボディーガードをしてたあんたが尾行をしてたわけか」
『そういうこと…で。義爛、なんであなたがメイキングを尾行していたか話してもらえないかな?』
「尾行してた理由か?金だよ。メイキングの経営するヘアサロンは今経営難に陥ってるんだが、メディアに自分が借金してる事がバレるのを恐れて普通の金融機関から金を借りることはせず、
店の常連で裏世界に顔が効く俺を通じて闇金から金を借りていたんだ。
ところが、最近俺が紹介した闇金会社からメイキングが蒸発したっていう話を聞いて探してみたらあいつ俺や他の人間の姿借りて逃げ回ってやがったんだよ。
本来アイツを問い詰めて金返せっていうのは、闇金の仕事なんだが俺の紹介した客で闇金会社に迷惑かけちまったからな。
自分から尾行を買って出たってわけだ。」
義爛はタバコを一本取り出して拳銃型のライターで火をつけた。
偽物の義爛ことメイキングが言っていた視線の正体は本物の義爛だったという事が明らかになった。