第29章 敵は味方のふりをして近づいてくる【義爛/シリアス】
『義…爛?』
私は前を向いて義爛がまだ前にいる事を確認した。
確かに義爛は私の存在に気づかないまま前を歩いている、なのに目の前にも同じ格好の義爛がいる。
つまり自分の前と横に同じ人間が2人存在してると言う不可解な状況
「…あんた誰だ?なんで俺の名前知ってんだ?」
『……え?』
どうやら私の横にいる義爛は私の事を知らないようだ。
前を歩く義爛が大通りの角を曲がったのが見えて私は隣にいる義爛を置いて前にいる義爛を追った。
すると、隣にいた義爛も私の後をついてきた。
『なんでついてくるの?』
「なんでも何も俺も俺の偽物を追ってるとこなんだよ!」
『……偽物!?』
「俺が本物の義爛だ、あの前歩いてるヤツは…」
前を歩く義爛が突然立ち止まり、メイク落としを取り出してそれで顔を拭った。
『………嘘。』
「前を歩いてるあの偽物の正体は、メイクアップヒーロー・メイキングだ」
メイク落としで顔を拭って元の顔に戻ったその人はメイキング先輩だった。
メイクアップヒーロー・メイキング。
個性:メイクアップ
自分の顔にメイクをすると今まで実際に会ったことある人間なら顔はもちろん服装髪型まで全部そっくりに変身できる。
ただし、メイクを落とすと全部元の自分に戻ってしまう。
『なんでメイキング先輩が…』