第29章 敵は味方のふりをして近づいてくる【義爛/シリアス】
1LDKの普通のマンションに義爛と暮らし始めて3日、彼はボディーガードとして私を雇ったというのに仕事へ出かける時はいつも私を置いて出て行く。
私を連れて行くのは、プライベートの買い物の時くらいだ。
彼が仕事中家の事をやらされているけど、義爛が何故私を雇ったのか私にはさっぱり分からない。
そして今日もてっぺんを超えたあたりの時間に義爛が帰ってきた。
『義爛、おかえりなさい』
「あぁ、ただ今」
玄関を上がって腸のようなマフラーとジャケットを脱がながら、部屋のソファーへと移動してそこでくつろぐ。
「……最近誰かの視線を感じるな」
『視線?』
「仕事へ行く途中やその帰りに…視線を感じる。」
『やっぱり私職場まで護衛した方が
「その必要はない」
でもそれじゃあボディーガードの意味が…』
「俺の依頼人は用心深い野郎が多いから初見の人間に凄い警戒する。仕事行くときはあんたには留守番してもらうって言ったはずだ。」
『そうだけど…義爛を守ることができなかったら元も子も……』
「俺は疲れた、今日はもう寝る。お休み」
そう言って義爛は自分の寝巻きを持って寝室へと入っていった。
私は、心のモヤモヤを感じたまま自分の寝床へついた。
次の日の朝、義爛はまた仕事へ向かった。
私はいつも通り義爛に留守番を任されていたが、義爛が家を出て数分後に私も家を出た。
私は、義爛を尾行することに決めたのだ。
せっかく雇われて今の仕事を手に入れたから少しは役に立ちたいという使命感と、視線の正体を知りたいと言う好奇心に駆られての行動だ。
裏世界のブローカーと言うからには、薄暗い路地裏とかに入ってチンピラ相手に商売してるのかと思いきや意外と人通りの多い商店街なんか通るものだから私は少し拍子抜けした。
『(…どこに向かったんだろう?)』商店街を抜けて大通りに出た
私がヴィジランテになる前に勤めてたヒーロー事務所も確かこの辺りだったなぁなんて自分の元職場を懐かしんでいた時だった
ドッ…
後ろから誰かの肩がぶつかった。
『あ、すみません』
後ろを振り返って謝ると、そこには私の前を歩いているはずの義爛がいた。