第29章 敵は味方のふりをして近づいてくる【義爛/シリアス】
またトイレに篭り、私はひたすら自分を落ち着かせる事に集中した。
信じていたものに裏切られた。
この事実を自分の中で処理する事に必死だった。
落ち着いてある程度普通に振る舞える精神状態を確保して、私はトイレから出て残った事務作業を片付けていると……
「高橋くん!これはどういう事だね!?」
社長がプリントを3枚持って私のもとへ怒鳴り込んできた。
『ど、どうって…私何か…
「何かも何もあるかね!?これ読んで!!」
渡されたプリントに目を通すと私はその内容に驚愕した。
プリントに印刷されていたのはネット掲示板やネットニュースの記事。
題名は【悲報】○○ヒーロー事務所サイドキック高橋楓違法薬物使用疑惑。
コメントには、私が違法薬物を日常的に使用してるという内容やそれに対する誹謗中傷私個人への批判はもちろん所属事務所まで全面的に叩く酷い内容。
『なっ…にこれ』
「この記事本当なのかね!?」
『嘘です!私違法薬物なんか使ってません!!』
「社長、そんなネットの記事だけで高橋さんを疑うだなんてあんまりじゃないですか」
そう言ったのは、ポップスタンプ先輩。
「しかしだね…ポップスタンプくん」
「持ち物検査を致しましょう。日常的に使用してるなら出てくるはずです。」
「そうだな、高橋くんきみのカバンを見せたまえ」
『わ、私だけですか!?』
「そうだよ、君が今疑われてるのだからな!」
ポップスタンプ先輩とその隣の女の先輩を見ると、さっき給湯室にいた時と同じ顔をしていた。
ギラついた瞳…私はそれを見て全てを悟った。
私は嵌められたんだと……