第29章 敵は味方のふりをして近づいてくる【義爛/シリアス】
サイドキックとして働き始めて1年。
先輩からの指導のおかげで私もようやく一人前のヒーローとして満足に活躍できるようになってきた。
「おつかれ〜楓ちゃん!」
パトロールから帰ってきた私を迎えるのは、私の4年先輩のメイクアップヒーロー・メイキング。
自分のヘアサロンを持つカリスマヘアメイクアーティストであり、チャラ男だ。
最近は、教育係のポップスタンプ先輩の手が離れ1人で行動する事が多くなったせいかメイキング先輩に付きまとわれる日々。
正直スキンシップ過剰なメイキング先輩にはウンザリしてる。
ポップスタンプ先輩にも何度も相談してるけどいつも「大変だね」の一言で終わる。
メイキング先輩を巻いて事務所のトイレから出て給湯室でコーヒーでも飲もうとした時、給湯室には先客が2人いた。
1人はポップスタンプ先輩、もう1人は後ろ姿しか見えないから誰かは分からない。
私は給湯室に入らず咄嗟に隠れた。
「ねぇ〜ポップスタンプ、高橋ってウザくない?ちょっと可愛くてメイキングに言い寄られてるからって調子乗ってるよね!」
後ろ姿の女がそういっているのが聞こえた。
ポップスタンプ先輩はそれを聞いて今まで私が見た事ないようなギラついた瞳のままで笑う。
「本当それ!誰が一人前にしてやったと思ってるんだかね〜私がメイキング好きなの知っててメイキングに色仕掛けしてんのマジムカつくんだよね」
私は、耳を疑った。
ポップスタンプ先輩が私の事そう思ってるなんて知らなかったし第1先輩がメイキング先輩を好きなことすら知らなかった。
先輩に私のことを話すことはあっても先輩は自分の事は今まで殆ど話してくれてなかったからだ。
私は怖くなってその場を立ち去った。
次に先輩に会うときどんな顔をして会えばいいのか分からなかった。