第27章 嘘つきヒーロー【切島鋭児郎/悲恋】
そして次の土曜日
昼過ぎに来た鋭ちゃんはやつれた顔をしていた。
「…でさ〜、爆豪に教えてもらってたのにテスト全然分かんないとこあってさ!それ爆豪に言ったら、ンな問題勉強せんでもできる範囲だろうがクソが!!って言ってきやがったんだぜ!酷くね?」
『ははっ…酷いね』
テストの時の話を聞くけどこれが嘘だということも分かってる
『ねぇ、鋭ちゃん…本当はこの1週間ロクに寝てないんじゃないの?』
「テスト忙しくても流石に寝てないなんてこたぁ
『本当はテストなんてとっくに終わってたんだよね?八百万さん達から聞いたよ。ずっと学校以外の時間働き詰めたったんじゃないの?』
「………」
『ねぇ、鋭ちゃん…何で嘘つくの?』
「…ごめん、けど俺は楓の前くらいカッコいいヒーローでいたいから」
『もう充分だよ…鋭ちゃんは立派な私のヒーローだよ!
だからもうこれ以上ボロボロになってく鋭ちゃん見たくないの…』
「何言ってんだよ…俺なんかよりずっとボロボロな癖にっ…」
鋭ちゃんの携帯からバイブ音が鳴る。
「あ、もうバイトの時間か…行かねぇと」
力なくフラッと立ち上がった背中がとても悲しく見えて私は思わずベッドから降りて鋭ちゃんの背中に抱きついた。
「……楓?」
左腕に刺さった点滴が引っ張られてる感覚に違和感を感じつつも鋭ちゃんを強く抱きしめる。
『……行かないで、側にいて』
「…それは、できねぇよ」
鋭ちゃんは、私の腕を優しく振り解く。
「俺なら大丈夫だ!」
鋭ちゃんは私の方に向き直って、私の頭を優しく撫でる
『…鋭ちゃん、大丈夫なんかじゃないよ!私、鋭ちゃんのやりたい事応援したいのに足枷になって鋭ちゃんの優しさに甘えて生きてる自分に腹が立つ。』
「楓…俺お前が足枷だなんて思った事ねぇぞ。
お前の頑張ってる姿見て俺も頑張んなきゃって思うしここに来るたびにお前の笑顔に救われてる。
俺はお前の病気変わってやれねぇ自分にスゲェ腹たってんだよ
何で楓なんだって…何度神様ってやつを呪ったかわかんねぇっ!俺がお前にしてやれることなんてこうやって顔合わせて話し相手になってやるか治療費と入院費払ってやるくらいだ
こんなことしかできねぇんだよ…」