第27章 嘘つきヒーロー【切島鋭児郎/悲恋】
次の週に、テスト期間にも関わらず八百万さんと耳郎ちゃんがお見舞いに来てくれた。
「よっ!楓久しぶり〜」
「楓さん、お久しぶりです。お加減いかがですか?」
『耳郎ちゃん!八百万さん!久しぶり〜今日は私調子良いよ』
「それは何よりですわ!これお見舞いの品ですわ」
そう言って八百万さんは千疋屋のフルーツの盛り合わせをくれた。
『こっ、これお高いやつじゃないっすか!良いの!?』
「勿論ですわ!」
『ありがとう!』
「前に楓が聴きたがってた曲楓のサウンドプレイヤーに入れてきたよ!それとウチのオススメも入れておいたから聴いてみて」
『おぉ!ありがとう。流石耳郎ちゃん!!』
「どういたしまして、それより…入院生活退屈っしょ?」
『うん、めっちゃ退屈!でも鋭ちゃん来てくれるから…』
「切島さんそんな頻繁にいらしてるんですね」
『けど今週テスト期間で会えないって…あれ?そういえば2人はいいの?テスト期間中なのに』
「へ?楓何言ってんの?」
「テストでしたら2週間前に終わってますわ」
『……え?どういう事?』
「嘘をついていたという事でしょうね。
切島さん、いつも授業終わると寮にも戻らずにすぐ外出されてましたし…何かあるのでしょうか?」
「ウチこないだ切島が工事現場でバイトしてんの見たよ!その前はこの病院近くのファミレスのバイトしてた」
「よほどお金に困ってらっしゃるのでしょうか?」
「さあね、授業中居眠りしてるの見つかって相澤先生に大目玉喰らってるくらいだから凄い遅くまでバイトしてるんだろうけど」
『……居酒屋だけじゃなかったんだ。』
「楓さん?どうかなさいましたか?」
『ううん、何でもないよ!せっかく貰ったしみんなで食べよっか!』
私は引き出しから果物ナイフとお皿を取り出してフルーツの盛り合わせからリンゴを1つとって皮を剥く。
りんごとぶどうを食べ終わり、少し談笑したあとで2人は病室を去った。
私の知らない鋭ちゃんの話を聞いて私はなんかやるせなくなった。
鋭ちゃんのヒーローになる夢を応援したいのに、その夢の一番の足枷になってるのが私だと思うと歯痒さで涙が止まらなくなる。