第27章 嘘つきヒーロー【切島鋭児郎/悲恋】
『…私、あとどのくらい生きれるのかな?』
病院のベットに横たわり私はそう呟く
近所に住んでいた幼馴染の切島鋭児郎が面会用の椅子に座ったままきょとんとした顔で私を見つめていた。
私は、去年膵臓癌だと診断を受けてここに入院している。
「おいおい、急にそんな弱気な事言うなよ!」
面会用の椅子に座ったまま鋭ちゃんは私の頭をわしゃわしゃと撫でる。抗がん剤治療を受けているせいで前より髪の量が減った頭を撫でられるのが恥ずかしくてすぐ鋭ちゃんの手を退ける。
私の父親は幼い頃ヴィランに殺され、母親は私と同じ病で去年亡くなってついに所謂天涯孤独というやつになった。
親戚付き合いのない家庭で育った私は、この病院を退院したとしても帰る場所がない。
『…だって、鋭ちゃんに入院費や治療費も払わせちゃってるしここでダラダラ入院してても鋭ちゃんの迷惑になるから……』
「大丈夫だ、俺は迷惑なんて思ってねぇからお前は何も心配するな!金の事は俺に任せろ!!」
昔のように屈託のない笑顔だけど、私が入院する前よりも鋭ちゃんの顔が疲れているように見えた。
心なしか目の下のクマも濃くなっている。
「来週1週間テスト期間で忙しいから会えねぇけど、また次の土日になったら会いに来るからな!」
『うん、鋭ちゃんありがとう…でもあまり無理しないでね』
「おう!じゃあな」
鋭ちゃんはそう言って病室を去った。
ベットから上半身を起こして伸びをすると、私のベットの上に鋭ちゃんが忘れていった携帯が置いてあった。
『あ、鋭ちゃん携帯忘れてる!』
私は鋭ちゃんの携帯を手に取った。
するとヴーっと電話のバイブが鳴った、咄嗟に私はその電話に出てしまった。
【もしもし切島くん、高木です。今日のバイト22時までって言ってたけどやっぱ深夜2時までにしてもらえないかな?2時までの子が急に1人辞めちゃったんだよね〜】
『あ、すみません…私この携帯拾って咄嗟に出ちゃったんですが…』
【へ?あ…そ、そうなんですか。切島くんどっかに携帯置き忘れて来ちゃったんだね〜…こちらこそすみませんいきなり…失礼します。】
気まずい空気になりながらも携帯を切った。
鋭ちゃんに携帯を届けようとベットから立ち上がると、病室の扉が開いた。
鋭ちゃんだ。