第21章 もしも願いが叶うなら…【轟焦凍/切甘裏夢】
「実はこないだ僕水族館のPRイベントに参加した時水族館ペアチケット貰ったから轟くんに彼女さんと行ってもらおうと思って持ってきたんだけど…」
「……ペアチケットか」
「流石にこの状況じゃ使えないよね…」
「いや、そんな事ねぇ…使える!ありがとう緑谷!話すきっかけができればあとはなんとかなるかもしれねぇ」
「本当に?力になれたなら良かったよ」
緑谷からペアチケットをもらってざるそばを食べ終え、事務所に戻る。
すると、楓と事務所前でばったり会った。
「楓、あのな…」
俺が口を開くと楓は走って事務所の中に入ってエレベーターのボタンを連打する。
俺が後を追うと今度は非常階段を駆け上がって事務室に逃げ込んでしまった。
楓を追って事務室に入ろうとすると事務室の中には事務所の社長がいた。
「高橋さん、あなたには悪いけど今日で事務所辞めてもらえないかな?」
『わ、私が…どうして、ですか?』
「あなたが1番わかってると思います。
ヒーローショートとの交際…それによって我が社が受けるイタズラや嫌がらせ、私達幹部はもうそれに対する対処ができなくなってしまいました。
ショートは我が社の大事な戦力ですが、あなたのような事務員ははっきり言って変わりが効きます。
申し訳ないけど、今日付けで解雇させていただきます。」
社長にそう言われ、楓はスカートをシワができるくらい握りしめ悔しそうに歯をくいしばる。
『……承知いたしました。ご迷惑をおかけして大変申し訳ありませんでした。今までお世話になりました。』
そう言って立ち去って事務室を飛び出した楓を追いかける。
「楓…おい、楓!」
名前を呼んでも無視して歩き続ける彼女が向かった先は資料室とは名ばかりな物置部屋。
入ってすぐ俺の目の前でバタン!と酷く扉を閉めた。
中からは楓の啜り泣く声が聞こえる。
俺は資料室の扉を開けて中に入る。
「楓…すまなかった。こんなことに巻き込んで…」
『…ひっ、ぐすっ…焦凍が悪いわけじゃないっ…うぅ、分かってる…でも私、焦凍のそばにいるのが怖い…焦凍には不釣り合い過ぎて、また酷いこと言われるんじゃないかって…怖くて怖くて仕方ないのっ…』