第21章 もしも願いが叶うなら…【轟焦凍/切甘裏夢】
あれから数週間がたって俺と楓は正式に付き合う事になった。そして、最近のマスコミは情報を嗅ぎ付けるのが早い。
付き合い始めて一週間後には俺の熱愛報道記事が出回った。
お相手は同じ事務所に所属する事務員と書かれていて楓の目に黒い線だけ入った写真まで出回った。
そして、事務所にはショートと別れろとかショートの女をクビにしろとか言うイタズラ電話も殺到しているともう1人の事務員である矢島から聞いた。
その影響か楓が最近俺の事を避けている。
「楓、報告書書けたぞ」
『矢島さん、報告書受け取っておいていただけますか?私書類コピー致しますので』
楓は俺に背を向けて書類をコピーしに向かう。
「楓っ…」
『コピー終わりましたので、そろそろお昼いただきますが…
よろしければ矢島さんお昼一緒にどうですか?』
「うん、良いけど…私より轟さんと一緒に食べてあげたほうがいいんじゃないかな?」
矢島は俺の方を憐れみのこもった眼差しで見ながらそう言ってきた。
『矢島さん、駅前の新しくできたパンケーキ屋さんに行きたいです!あのお店混みますから早く行きましょう!』
「あ、う…うん」
矢島は楓に手を引かれながら事務所を後にした。
俺は事務室前でポツンと1人取り残された。
楓に避けられてるこの状況をどうしたらいいか考えていると、一件のLINEが届いた。
楓からかと思って携帯を見ると緑谷からで、俺の事務所の管轄区域近くまで来たから昼飯一緒に食べようという内容のLINE。
俺は二つ返事でOKして緑谷の待つ定食屋へと向かった。
「轟くん!こっちだよ〜」
緑谷が席に座ったまま声をかけてきた。
「悪ィ、少し遅くなった。」
「ううん、大丈夫だよ…轟くん熱愛報道見たよ。何だか大変そうだね」
「あぁ、楓…熱愛報道で挙げられた交際中の事務員に今すげぇ避けられてる」
俺が知ってる限りの事の詳細を緑谷に話すと緑谷も相槌打ちながら真剣に聞いてくれた。