第21章 もしも願いが叶うなら…【轟焦凍/切甘裏夢】
控え室に行って出番まで待っているとノックされ、入室を促すと楓が入ってきた。
「楓…俺イベント挨拶のカンペを事務所の更衣室に忘れてきたんだが、どうすりゃ良い?」
『ど、どうすりゃ良い?って言われましても…』
「頼む、一緒に考えてくれねぇか?」
『甘えないでくださいよ!』
「……やっぱダメか?」
『分かりました!時間ありませんし私もこういうの得意ではありませんが知恵は絞ります!!』
「ありがとうな」
そう言って頭を撫でるとまた彼女は軽くパニックになった。
こうして2人で話し合って挨拶文を考えていると、いきなり楓が口を開いた。
『…私ホントにここに居ていいんでしょうか?』
「何がだ?」
『このイベント、雑誌についてるハガキを出して抽選で選ばれた人だけが来れるパーティーなんですよ?
私なんかよりたくさんハガキ出して外れた人とかもいるのに…なんか私狡いですよ』
「楓、これはお前の仕事だ。ズルなんかじゃねぇ…だからお前は俺の隣で堂々としてれば良い、分かったな?」
『……はい。』
コンコンとノックの音が聴こえてスタッフがショートそろそろ出番です!舞台袖待機お願いします。と声をかける
「…そろそろか」
『そうですね、頑張ってください。舞台袖から見てますから』
「一緒に舞台上がってくれねぇのか?」
『流石にそれはダメですっ!』
楓にきっぱり言われて渋々舞台袖から舞台へ上がる。
マイク前に立つとパーティードレスを着た女性ファン達からの黄色い声援が飛ぶ。
【この度はヒーロー雑誌[ヒーローズ]をお買い上げありがとうございます。ヒーローショートです、本日は皆様とこのような交流の場を設けていただけた事大変嬉しく思いますーーーー】
俺の挨拶が終わると早速サイン会と握手会に入るとのことで、会場セッティングの為俺は一度舞台袖へと戻った。
『ショート、挨拶素晴らしかったです。』
「楓のおかげだ」
そう言って俺が楓に抱きついて離れると楓は力が抜けてその場に座り込んだ。
「…大丈夫か?」
『だ、だだだ大丈夫っ/////ですっ!!』
そう言いながらも彼女はボロボロ涙を流す。
「大丈夫じゃねぇだろ?ほら、涙拭けよ」