第20章 登下校の満員電車【爆豪勝己/裏】
爆豪くんと登下校をするようになってから早2週間が経過しようとしていたが、爆豪くんがいるおかげであれほどしつこかった痴漢被害もピタッと止んだ。
だが、ボディーガード開始初日に痴漢防止策だと爆豪くんに言われて電車内では行きも帰りも爆豪くんに後ろから抱きしめられた状態で乗車する事を義務付けられてしまった。
今は下校中で帰宅ラッシュの時間帯で電車も通勤ラッシュ並みの混み具合。
奥の方は人でごった返していて入れないからドア付近の場所に乗ってドアが閉まって電車が動き出す。
ガタンゴトン…ガタンゴトン…
家路へと導く無機質な音を聞きながら、私は背中に爆豪くんの体温を感じる。
爆豪くんからはニトロのような甘い香りがして、皮の分厚い逞しい手が私の胸元と腹部に回っている。
ドアの方向を向いてる私からは仏頂面で私を抱きしめる爆豪くんの顔がよく見える。
この至近距離には未だに慣れないしドキドキしながらも、私は背にいる彼にお礼をいう。
『爆豪くんと登下校するようになってから今日で二週間、かな?…おかげで痴漢被害遭わなくなった……ありがとうね!』
この状況も相まってか、私の顔は一気に恥ずかしさで熱を持ち始め目線を下に向ける。
そんな私を見て爆豪くんの口は弧を描く。
「お前馬鹿だろ?」
『…え?』
突然発せられた一言に私は目線を上げてドアにはめ込まれた窓ガラス越しに彼を見る。
「痴漢してる相手が腕の中にいるんだから、痴漢なんてする必要ねぇだろ」
『どういう…こと?え?ち、ちょっと待ってまさかっ!…』
「そのまさかだ、今までお前を痴漢してたのは俺だ」
『…嘘、でしょ?』
目の前が真っ暗になって思考回路が追いつかないでいると、爆豪くんの手が私のお尻と太ももを撫でる。
「…どうだ?覚えてんだろ?この感覚」
この手つきはまさしく私を痴漢していたヤツの手つきそのものだった。
どうして今まで気づかなかったのだろうか。
多分それは切島くんが信頼してる人だから大丈夫だっていう過信がどこかにあったからかもしれない…。