第19章 真心を込めて…【飯田天哉/裏】
『授業終わって寮戻ってから昼間のお詫びも兼ねて天哉に渡そうと思って作り始めたんだけど……あぁ、やっぱ私料理下手だし天哉に食べてもらうならもっと修行してからの方が良いかもって思えてきた!
ごめんね、これ全部私食べるわ!!』
皿に盛られたビーフシチューを鍋に戻そうとする楓くんの腕を掴み俺はお皿とスプーンを受け取って楓くんの手料理を食べる。
それはお世辞にも美味しいとは言えないものだった
肉は半ナマ、野菜は噛むたびにガリゴリ音がなるくらい火が通ってない。
ルゥも固まりがまだ残ってる酷い出来のビーフシチュー。
だが、俺に美味しいと言ってもらうために彼女が寮に戻ってからの膨大な時間を費やし指を怪我しながらも頑張って作ってくれた事を思うと俺は胸がいっぱいになった。
「美味い!ランチラッシュの作るビーフシチューよりずっと美味いぞ!!」
『て、天哉!?良いよ、無理しないでよ』
「無理なんかしてない…楓くんが俺の為に作ったビーフシチューだ。美味くない筈がないだろう?」
結局俺は鍋にあるビーフシチューも全部1人で平らげ、自分の使った食器とビーフシチューを作った鍋を洗う。
『…天哉、ありがとう。』
「礼を言うのは俺の方だ。君の心がこもった手料理を食べれてとても嬉しかった。
君が昼間のこと反省して俺の為に手料理を振る舞ってくれようとしていたのに…ヒーロー基礎学の時遅刻した君を俺は本当の理由を聞こうともせず頭ごなしに怒鳴りつけて…
すまなかった!」
『あ、謝らないでよ!あれは完全に私が悪いんだから…』
「…ズボラで自由奔放なところが目立つが、君は自分がやり過ぎたと思ったことを素直に反省し、詫びることができる人間だ。
これは、なかなかできることではない。
俺は1人の人間として、君のそういうところを尊敬しているのだ。」
『あ、ありがとう…なんか照れるなぁ〜』
「そして、君の自由奔放さは見ていてハラハラする」
『う"…うーん、ごめんなさい』
「ハラハラするから目が離せない…だから俺は君が好きなんだろうな
楓くん、この後俺の部屋に来てくれないか?」
『…////』
そういうと楓くんは意味を理解し、こくりと頷く。
そして今に至る…。