第19章 真心を込めて…【飯田天哉/裏】
(飯田天哉視点)
昼食を食べ終え、午後のヒーロー基礎学の授業の為みんなグラウンドγに集合して授業開始時間15分が過ぎようとしているのに…
「おい、誰か高橋がどこにいるか知ってる奴はいるか?」
授業時間を15分過ぎても来ない楓くんについて相澤先生が生徒たちに聞くがみんな知らないと答える。
『すいまっせーん、遅れました〜』
平然とヘラヘラしながら入ってくる楓くんが俺たちの前に現れた。
「楓くん!君という人は全く!授業開始時刻はとっくに過ぎているというのにどこに行っていたんだっ!?最高峰のヒーロー科である雄英生としての自覚が無さすぎるぞ!!」
俺は、遅刻してきた彼女にカッとなってつい大声で怒鳴ってしまった。
『…いやぁ〜天気が良かったから外でお昼寝してたら寝過ごしちゃった〜ごめんごめん!』
「そんなふざけた理由でっ…
「飯田、もういいそいつを叱ったところで時間の無駄だ。……高橋、君は合理性に欠くね。遅刻の罰則は後で覚悟しとけよ。」
『はーい』
そう言って平気な顔でみんなのところに戻る楓くんを見て俺は納得いかない気持ちを押し殺し、授業を受ける。
授業が終わり寮の自室で課題をしていると少しお腹が空いてきた。俺は課題をキリのいいところでやめて、寮の厨房へと向かう
冷蔵庫の中に今何が残っていたか考えながら歩いて行くと、厨房の方から馥郁たる香りが漂ってきた。
誰かが料理をしているのか?と思って厨房を覗くとそこには楓くんがいて鍋の中のビーフシチューと思わしき見た目のものを皿に盛っていた。
彼女の指にはいくつもの絆創膏が貼られていて、まな板に絆創膏を使った後の小包装がいくつも散らばっていた。
『天哉!』
楓くんが俺に気づいて声をかけてきた。
「楓くん、晩御飯を作っているのか?」
『うん…あの、天哉お昼の時ごめんね…それで、あの…これビーフシチュー』
「…楓君の手作り、なのか?」
『うん、今日のお昼食べ終わったあとすぐ食材買いに走って寮の冷蔵庫入れに行ってたらヒーロー基礎学間に合わなかった…』
えへへと笑う楓くんの顔は少し申し訳なさそうな感じの苦笑い。