第7章 愛の挨拶
朝ごはんを食べてるときに、智に考えていたことを話した。
「あのね、今日買い物に行こうと思ってるんだ」
「買い物?何買うんだ?」
味噌汁を啜りながら智が聞いた。
「楽譜」
「楽譜?ビアノのか?やっぱり楽譜ないと難しいか」
「クラッシックじゃない楽譜が欲しいんだよね。
お店の雰囲気的に、もっとカジュアルな曲の方がいいかなって」
「ふ~ん、そうなんだ」
「そういった曲が纏まってる楽譜集買いたいんだ」
「うん、わかった。
なら俺も一緒に出掛けるかな。
翔と洋服買い物に行った以来、スーパーくらいしか出掛けてないもんな」
「そうだね。
あ、それとね、今日から俺少し早く店に行くから」
「なんで?」
「ピアノの練習するから…
昨日ニノさんには許可取ってるんだ。
だから智が持ってる店の鍵貸して?」
「いいけど、今日は俺も一緒に行くよ」
「え?いいよ…そんな迷惑かけられないよ。
智は後からゆっくり来て」
「今日はさ、外で昼メシ食おう?
そのまま店に向かった方が、駅から近いだろ?」
「それはそうだけど…」
いいのかな…俺の都合に付き合わせちゃって。
「ひとりで出掛けたい?」
「えっ?」
智の言葉に顔を上げると、智が俺の顔をじっと見ていた。
「俺が一緒に行ったら迷惑?」
「ううん、そうじゃない…
俺が迷惑かけてるかなって…」
「ならいいよな?今日はデートしよ?」
「デ、デート?」
デートなんて…そんな…
「ははっ、真に受けるなよ…
言葉のアヤだろ?」
「そ…そうだよね…」
なんでだろ、顔が熱い…
そう言えば俺、デートもしたことないや。