第7章 愛の挨拶
《翔サイド》
「おはよ…」
「ん……智…おはよ…」
目が覚めすぐ近くで智の声が聞こえた。
反射的に挨拶を返したあと、徐々に現状が見えてくる。
いつもより熱く感じる体温…近いのは声だけじゃなかった。
「なんで俺たち…抱き合ってるの?」
智の腕が俺の背中に回っている。
そういう俺の腕も、智の体に巻き付いているんだけど…
「だってお前、抱きついてくるんだもん。
俺の腕のやり場がないから、背中に回しただけだけど?」
智が爽やかな笑顔で答えてくれた。
「えっ!嘘、ごめんっ」
慌てて智の体から離れようとしたんだけど
智の腕に確りと抱きしめられていて、離れることが出来なかった。
「なんで謝んの?」
「だって、嫌でしょ?
男に抱きつかれるなんて…」
「イヤじゃないよ…俺だって翔のこと抱いてんじゃん」
結局、抱き合ったままの体勢で、会話を続けている俺たち。
「あ…」
言われてみればそうか…
智は目が覚めていたのに、俺のこと抱きしめてたってことだよな。
「翔は嫌なの?」
智が微笑みながら問いかけてきた。
でもその問いかけを、考える必要はなかった。
「嫌じゃない」
だって智の温もりをこんな近くに感じられるんだから、嫌な訳ない。
すぐにそう答えた俺に対し
益々優しい笑顔を見せてくれる…
俺の体の中も、温かさで満たされた。