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きみに届けるセレナーデ 《気象系BL》

第6章 トロイメライ


家に帰り夕食を済ませた。

今日の食器の片付け当番は俺だから、翔が先に風呂に入り、後から俺が入る。

いつもだったら、翔は俺が風呂から出てくる頃には布団に入って先に休んでるんだけど
今日はまだリビングのソファに座っていた。

冷蔵庫から缶ビールを出し、ソファに座る翔の元へ。

「翔、どうした?まだ寝ないのか?」

俺が声を掛けると、少し恥ずかしそうに俺の顔を見上げた。

「あのね、智…」

「ん?」

プルタブを開け缶に口を付けながら、翔の隣に座った。
俺が座ると、今度は視線を少し下げ、口を開く。

「今日も聴かせてくれないかな…『星に願いを』」

「その為に俺のこと待ってたの?」

「…うん。駄目?」

上目使いで、俺の様子を探るように見つめるんだけど
その瞳で見られたら、駄目なんて言えるわけない。

「いいよ。今日はいっぱい翔のピアノ聴かせて貰ったからな。
俺の歌で良ければ、いくらでも歌ってやるよ」

その瞬間、翔が満面の笑みを浮かべた。

「ありがとう、智」

「お前のピアノに比べれば安いもんだよ」

翔の頭に手を乗せると、翔は首を横に振った。

「ううん、そんなことないっ。
智の歌を聴いたから、今日の俺の演奏が出来たんだ。
智の歌が俺の演奏を変えてくれた」

「そうか…」

頭を撫でながら微笑むと、翔も笑って『うん』と頷いた。

俺の歌で、お前の演奏を変えることが出来たのなら
お前の気持ちも変えられるように歌ってやるよ。
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