第6章 トロイメライ
《智サイド》
相変わらずニノの鋭さというか、人の心を読む力には驚かされる。
翔が『智の為に弾いてるんだから、智が良いと思ってくれたならそれでいい』なんて、可愛いことを嬉しそうな笑顔で言うもんだから
ドキッとして、思わず視線を逸らしてしまった。
そんな俺の些細な行動を、ニノは見逃さないんだよなぁ。
『智…翔に惚れた?』
ニノは俺の肩に手を置くと、耳元でそう囁いた。
突然の問い掛けに、固まってしまった俺。
その姿を見て、ニノは俺の気持ちを決定付けた。
ニノに隠し続けるなんて、無理だとは思ってはいたさ
でもまさか、翔に惚れたことを自覚した初日にバレるとは…
ニノ、恐るべし…
それとも俺がわかりやすいのか?
ニノもそう言ってたし。
今まではこんなことなかったんだぞ?
好きな相手の笑顔を見ただけで、心臓が跳ねるなんてなかったんだ。
翔相手だと、勝手が違う…翔だからなのか。
でもニノが俺の背中を押してくれるとはな…
昨日、ニノが『翔にはまだ早い』って言ってたし
ニノに知られたら、止められる可能性もあるな、と思ってた。
それなのに『一番の適任者』だなんて…
正直どうするか迷ってはいた…
愛を押し付けすぎて、翔が俺の元から去っていくことだけは避けたい。
相葉さんの事で悩んだ直後の翔に、想いを伝えるのは無謀な行為だろう。
だから、現状俺がやれることは、今までと変わらない。
あいつが『愛』を受け入れられるようになるまで、真綿にくるむように、そっと包み込みこんでやるだけ。
俺の情が『親の情』から『恋愛の情』に変わりはするけどな。