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きみに届けるセレナーデ 《気象系BL》

第6章 トロイメライ


1時間ほどピアノを弾いてると、ニノさんが俺の横に立ち、肩に手を置いた。

「弾き続けていると疲れるでしょ?少し休んで?」

前だったら一日中弾かされていたのに、久しぶりに弾いたせいか、確かに少し疲れたな。

だいぶ指も鈍ってたし、これからは営業前にここで少し練習させて貰おう。

ニノさんとふたりでカウンターに戻ると、智が笑顔で迎えてくれた。

「ピアノ、すげえ良かった」

「ほんと?」

「あぁ、本当に…
でも俺は素人だからな、俺の感想はあまりあてにはするなよ?」

「ううん、智の為に弾いてるんだから、智が良いと思ってくれたならそれでいい」

「そ、そうか…」

心なしか慌てたように、智が俺から視線を逸らした。

今、俺なんかした?
その様子を見ていたニノさんは、苦笑して智の肩に手を置くと、耳元で何か話した。

ニノさんが肩から離れると、智は少し顔を紅くしてニノさんのことを凝視した。

「ははっ、智って分かりやすっ」

「おまっ…」

「いいんじゃないの?
一番の適任者だと思うけど?」

「そ、そんなつもりじゃねぇし…」

「だとしても、自然の流れでそうなったのなら、そのまま進んでみていいんじゃない?
それで相手が受け入れるなら、一番いい形だと思うけど?」

ニノさんが優しい眼差しで智のことを見つめた。

智はその視線を受け
暫く真剣な表情でニノさんを見つめ返していたけど
頬を緩め『ふっ』と笑った。

「そうだな…俺も既に手放し難くなってるし…」

「だろうね…あんな智見たの初めてだもん」

「しゃあねぇだろ…俺だってこんなの初めてだよ」

「あれ?意外と純情?」

「違うわっ」

「じゃあ、相手のせいか…」

ニノさんが俺の方をチラッと見て微笑んだ。
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