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きみに届けるセレナーデ 《気象系BL》

第1章 プレリュード


「ああ、潤が関係を持ってるもう一人の人ですね。
こちらとしては、望んで付けられたキスマークではないので
出来れば、つけた潤に注意して貰いたいですけど…
智の立場的にオーナーに、そんなこと言えないですもんね。
わかりました…以後気を付けます。
まぁ、もうないとは思いますけど」

無表情で答える翔には、潤さんに対する愛情なんて全く感じられない。

「翔は潤さんのこと、どう思ってんの?」

「どうって…恩人なので感謝はしてます」

着替えをしながら淡々と話をする。
若いのに、いや若いから?
感謝してると言いつつも、気持ちがこもってなくないか?

「好きとか愛してるとかないの?」

俺がそう言うと、着替えていた手を止め俺の顔をじっと見た。

「好き?愛してる?
それって、どういった感情なんですか?
俺は今まで、その二つの感情を抱いた事がないのでわかりません」

「は?いや、そんな筈ないだろ?
もう20年も生きてるんだぞ?
『愛してる』はなかったとしても『好き』はあるだろ…」

翔は首を傾げると何かを思い出すように考え込み、暫くすると、ゆっくりと首を横に振った。

「人だけじゃけじゃなく、物に対しても強く好きだと思ったことはありません。
幼い頃はわかりませんが、少なくとも記憶の中には存在しません」

嘘だろ?
コイツ、今までどんな生活してきたんだよ…

これじゃ潤さんも手こずるはずだ。

捨て猫じゃなくて、野良猫なんじゃないか?

そう思っていたのに、着替えを終え、髪を整えた翔を見て度肝を抜かれた。

どこぞの王子さまか?ってくらいの気品が漂っている。

うちの店のユニフォームと言っていい、黒のベストに黒のスラックス。

真新しい白のYシャツに、深紅のネクタイを身につけたコイツは、やたらと様になっていて
なんかすげえ着なれてる感じがする。

野良猫じゃなくて、気高い高級猫だったか。
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