第5章 子守唄
「智…子守唄なら、寝るときに聴きたいな」
「子供みたいだな」
「だって俺、子供なんでしょ?
智がそう言ったんじゃん」
「え?…あぁ、お客さんに言ったやつか…
なんだお前、そんなの気にしてたのか?」
「別に気にしてないよ」
「そうか?でも顔は剥れてるぞ?」
正直ね、少し哀しい気持ちにはなった…
智にとって、俺はまだ子供にしか見えてないってこと。
でもしょうがないよね?それだけ智には世話を掛けてる。
今だって子守唄歌ってなんてさ…
でも、智にだけなんだ…こんな我が儘を言ってしまえるの。
だって俺が我が儘を言うと、智は嬉しそうに微笑んでくれるから。
「智、もう寝よ?」
俺は立ち上がって、智の腕を掴み引っ張った。
「はいはい、お子ちゃまは寝る時間だもんな」
智は立ち上がると俺の頭を撫でた。
寝室に入って布団を敷こうとしたら智が
「一緒に寝るか?」
って聞いてきた。
智のベッド…ふたりで寝られなくはないけど…
「…いいの?」
「子守唄なんだから、近い方がいいだろ?」
「うんっ」
智が布団を捲ってくれたから、ベッドに上がった。
さすがに正面を向いて寝るのは恥ずかしくて、智に背中を向けて横になる。
「おやすみなさい」
「おやすみ」
智は明かりを消すと、小さな声で歌い出した。
その歌を聴きながら瞼を閉じると、智の手が俺の髪を何度も撫でてくれる…
好きなものが同時に与えられ、また俺の中の何かが熱くなった…
心地よい熱に満たされたまま、深い眠りに落ちていく。