第5章 子守唄
《智サイド》
ニノの言う通り、翔は俺の歌をとても気に入ったらしく『もっと聴きたい』なんて言ってきた。
泣かれた時は驚いたが、翔がこうやって自分の気持ちを伝えてくれるのは嬉しい現象だ。
寝るときに聴きたいと言って、俺の腕を掴み『もう寝よう』なんて誘う姿は
子供が親にねだっているように見えて、微笑ましい。
寝室に入り、布団を敷こうとする翔に『一緒に寝るか?』と、提案した。
翔の家に泊まった時、擦り寄るように寝ていた翔を、思い出したから。
男同士で一緒に寝るなんて、嫌がるかとも思ったが
翔は少し躊躇いながらも『いいの?』なんて聞いてきて
布団を捲ってやると、少し照れながらもベッドに上ってた。
その表情を見て、やっばり言って正解だったと思った。
背中を向けて寝る翔に、子守唄を歌う。
翔の柔らかな髪が目の前に…
その髪を撫でていると、翔から静かな寝息が聴こえてきた。
少し体を起こし、翔の顔を覗き見ると、穏やかで幸せそうな寝顔。
「おやすみ…」
その頬に手を触れると、翔の顔に笑顔が浮かんだ。
可愛らしいその表情につられて、俺も笑みが浮かぶ。
ほんと癒しの元だよ…
ほっこりとした気持ちのまま、眠りに就いた。
そして翌朝…
首元のくすぐったさで目が覚めた。
寝返りを打ったのか、翔が俺の方を向き
寄り添うように眠っていた。
少し体を離し、その寝顔を見ると、やはり子供のように可愛らしい。
二十歳の男の顔じゃねぇよなぁ…
しばらくその表情を見ていたら、翔の瞼がゆっくりと開いていった。
寝起きで焦点の合わない視線が、俺の姿を捉えると
ニコッと笑い、その瞬間、俺の心臓がドキッとなった…
「…おはよう、智…」
「お、おはよ…」
何故だかわからないが、吃ってしまった…