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きみに届けるセレナーデ 《気象系BL》

第5章 子守唄


「フロアーの片付け終わりました」

「ありがとう、じゃあ智の手伝いしてくれる?
俺、事務仕事して来ちゃうから」

「はい」

ニノが俺の肩をポンっと叩き囁いた。

「話聞いてやりなよ?パパ」

「おう…」

ニノがいなくなると、翔が隣に立った。

「グラス磨けばいい?」

翔は俺の方を見ることなく聞いてきた。
その声は、いつもより少し無機質なものに聞こえた。

「ん、よろしく」

無言でグラスを磨き始めた翔。

自分からは言ってこないか…

「なぁ、翔…」

「ん?」

「今日、相葉さんに食事誘われたんだろ?」

翔の手が一瞬止まった。

「…うん」

再びグラスを磨き始めた翔の顔は、無表情で何を考えてるのか読めない。

「返事保留してるんだろ?どうするか決めたのか?」

「まだ…」

「少しでも躊躇いがあるなら、断ればいいんじゃないか?」

「…でも、相葉さんいい人だし…」

「まあな…でもニノから聞いたんだろ?
相葉さんは、お前に特別な感情を持ってる。
それをわかってて、その気持ちに応えられないと思うなら
無理して行くことはないんじゃないか?」

黙りこんでしまった翔。

「それとも翔も相葉さんのこと、特別な意味で気になる存在とか?」

翔は首を静かに横に振った。

「でも、こんな俺に凄く優しくしてくれて…
ド素人が作ったカクテルを美味しいって言って飲んでくれて…
それなのに俺、断っていいのかな、って…」

ああ、そうか…
こいつは優しくされることにも免疫がないのか…

だから人からの好意にどう対処していいのかわからないんだ。

ほんとに一から子育てだな、こりゃ…
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