第5章 子守唄
「そんな、捨てるだなんて…」
そんなこと微塵も思ってないのに。
「智がそう思って言った言葉だとしても、受け止めるのは翔だから…
完全に信頼関係が出来るまでは、ちゃんと詳しく言葉にして伝えてあげないと」
「ん、わかった…」
「それとさ、翔に恋人はまだ早いかも」
「早い?」
「うん…いきなり恋人はまだちょっと…
さっき翔と話してみて、そう思った。
愛情を与えられてこなかったせいで、免疫がないって言うの?
あまり急激に愛情を与えても、逆効果になる可能性がある」
「どういうことだ?」
「だから、『好きです』とか『愛してます』とか迫られると、拒絶反応を起こすかもしれないってこと。
潤のこともあったし…
だったら智がしてることを続けてあげる方が、いいんじゃないかな。
愛情込めて、ゆっくり子育てして
愛を信じられるようになったら、次は恋人…って段階踏んでった方がさ」
「う~ん、そうか…」
「翔もね、相葉さんのことはいい人だってわかってるんだよ?
だから俺も、翔にその気があるんだったらいい相手だと思うって言ったんだけど
それでも表情が暗かったから…
そういうのは、まだ無理なのかなって。
だけど優しい子だからさ、どうやって断っていいかわからなかったみたい。
だから、智に助けて欲しかったんじゃないのかな?」
「俺に?」
「寂しそうだったよ?
智が女性のお客様と楽しそうに話してる姿見てる時の翔。迷子みたいな顔してた」
ニノと話した後に、カウンターに入ってきた翔…
あの時俺は、翔に話を聞くのを躊躇った。
あの時、聞いてやるべきだったのか。
「俺もまだまだ未熟な親だな」
「ふふっ、しゃあないでしょ?
まだ子育て始めたばっかりなんだもん」
「だよな…」
「まぁ、翔が助けて欲しかった理由はそれだけじゃないんだろうけどね…」
「え?どういうこと?」
「さぁねぇ…子育てしていけばいずれわかるんじゃない?」
ニノが意味ありげに笑ったけど、俺にはさっぱりわからん。
ニノってやっぱ、人の気持ちを読み取る力が長けてるんだよなぁ。