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きみに届けるセレナーデ 《気象系BL》

第1章 プレリュード


翌日、開店時間30分前に潤さんが店に姿を見せた。

「おはよう」

「おはようございます、潤さん」

「おはよ、潤。その子?潤が言ってた子」

潤さんの後ろに隠れるように立っていたその人物を、潤さんが肩を抱き前に押し出した。

姿を現した彼は、まだ少し幼さが残ってはいるものの端正な顔立ちをしていた。

「あぁ、急で悪いがよろしく頼む。
櫻井翔…今年二十歳になったばかりだ。
ほら、翔…ふたりに挨拶しなさい」

『櫻井翔』を見る潤さんの瞳は慈愛に満ちていて
そんな潤さんを、目の前で見なきゃいけないニノは、今、どんな気持ちでいるのだろう。

「…櫻井翔です。よろしくお願いします…」

そう言いながら、ペコッと頭を下げた。

ニコリともしないその挨拶に、昨日ニノがなかなかなつかないって言っていたことを思い出した。

猫か…潤さんが拾った時点で、訳ありなのはわかっていたけどね。

「ここのマスターやってる二宮和也です。
皆、ニノって呼ぶから翔もそう呼んで?よろしく」

ニノが手を差し出すと、その手を握り返した。

「よろしくお願いします、ニノさん」

「それで、こっちが大野智」

ニノが俺の方を向いて紹介すると、彼も俺の方を向いた。

「大野智です。よろしく…」

ニノと同じように手を差し出すと、彼が手を握ってきた。

綺麗な手だな…

なんの苦労もしてなそうな手をしてるのに
彼の大きな瞳には暗い影が見える。

「よろしくお願いします、大野さん」

「ああ、智でいいよ。堅苦しいの苦手なんだ」

「はい、智さん」

「『さん』も無し、智だよ」

「え?でも年上、ですよね?」

「ん?まぁそうだけど、俺がいいって言ってんだから気にするな」

「…わかりました。よろしくお願いします、智」
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