第5章 子守唄
「智」
「ん?どうした?」
「今度はスクリュードライバー教えて?」
「スクリュードライバー?相葉さんのオーダー?」
「ん、そう」
「ふ~ん…」
智が相葉さんの方をチラっと見た。
「どうかしたの?」
「ん、いや、別に…
いいよ、教えてやるから来いよ」
智の隣に立つと、カウンターに座ってる例のお客様たちが智に声を掛けてきた。
「あれ?そちらの方もカクテル作るんですか?」
「あぁ、今日が初めてです…」
「そうなんですね~、私も頼もうかなぁ?」
「まだひよっこなので、もう少し勉強してからお願いします」
「やだぁ、ひよっこだなんて。
でもまだお若そうですよね?」
「えぇ、二十歳になったばっかりの子供ですよ」
「子供だなんて大野さんたら…
二十歳過ぎれば大人でしょ?」
「外見は大人でも中身は子供ですから」
「え~?そうなんですかぁ?」
クスクスと笑う女性客たち
そして智が女性客に向かって微笑みながらそう答えていることに、何故か胸がズキッとした。
智からすれば俺って子供なんだ…
そりゃそうだよな…
何から何まで教わって…
生活まで面倒見てもらって…
そう思われてても当然だよな。
「翔?」
「え…」
「え、じゃなくて…
スクリュードライバー作るんだろ?
どうした?ボーっとして」
智が心配そうに俺を見てる…
きっとこうところが子供なんだよな。
余計な心配させて…
「ううん、なんでもない」
俺が首を横に振っても、まだ少し心配そうに見ている。
「そうか?」
「うん」
「ならいいんだけど…」
「相葉さんお待たせちゃうから早く教えて?」
「わかった…」