第5章 子守唄
《翔サイド》
「お待たせいたしました」
智が微笑みながら、女性のお客様にカクテルをお出しすると
女性のお客様は、ふたりとも頬をピンクに染めて嬉しそうに微笑み返した。
「あ~あ、智も罪な男だよねぇ…」
俺の隣でニノさんがボソリと呟く。
「え?何がです?」
「ん~?あのふたり頻繁に来店されてるんだけど
智のファンらしくてさぁ」
「智のファン?」
「そう…智の作るカクテルファンの方も多いんだけどさ
あのふたりは完全に智自身がお目当てだね。
他にもシェイカー振る姿に惚れてるお客様も結構いるし
残念なことに本人は全くもってわかってないけどね」
そうだよな…
俺もこの三ヶ月、智の仕事する姿見てるけど、真剣な表情でカクテルを作る智は格好いいと思うもん…
そういえば智って彼女いないのかな?
俺、智の家に住みついちゃったけど、もしかして凄い迷惑掛けてるんじゃ…
智は迷惑じゃないって言ったけど
智、優しいから俺のことほおっておけなかった?
「…ょう………翔?」
「えっ?」
顔を上げるとニノさんが苦笑いをしながら俺を見ていた。
「翔まで難しい顔して…ほんと親子みたいだな」
「え?」
「ううん、なんでもない。
相葉さんが次のカクテルオーダーしたいって言うからお訊きして?」
「あっ、すみません。何にしますか?」
「スクリュードライバーがいいな」
「スクリュードライバー…ですか?」
「うん、また翔くんが作ってね?」
「はい。畏まりました」
オーダーを承けると、ニノさんがまた苦笑いをして俺を見ていた。なんでだろ?