第4章 子犬のワルツ
「相葉さん、お待たせしました」
翔が俺に教わりながら作ったカクテルを少し緊張しながら相葉さんの前に出した。
「お口に合うかわかりませんが…」
「大丈夫、お口を合わせるから」
相葉さんが笑ってそう言うと、翔は一瞬驚いた顔をしたけど、ふっと頬の筋肉を緩めた。
「相葉さんってほんと面白い方ですね」
「そう?思ったことを言っただけなんだけどなぁ」
相葉さんはグラスを持ち口をつけた。
「うんっ!旨いよ」
「本当ですか?」
「ほんとほんと。俺本当に思ったことしか言わないし」
「ありがとうございます」
相葉さんにお礼を言うと、嬉しそうな笑顔を浮かべた。
その笑顔を見た相葉さんは、じっと翔を見つめ固まったかと思ったら、次の瞬間顔を真っ赤に染めた。
「あ~あ、あれはヤバイね」
ニノが俺の隣でボソッと呟いた。
「何が」
「あれ、本気で惚れちゃうやつだよ」
「まさか?」
「なんで『まさか?』
今までだって微笑みくらいは見せてた。
でもあんな可愛い心からの笑顔向けられてみなさいよ
男なんて一発KOだから。
ただでさえ相葉さんは翔のこと気に入ってんだよ?
初めての客になるなんて言ってたけど
本心は初めての男になりたいんじゃないの?
まぁ、残念ながら初めては潤が貰っちゃってんだけどね」
「お前なぁ…」
「なによ?事実でしょ?」
「それはそうなんだけど…」
「何かご不満?」
「…別に…」
不満がある訳じゃない…
ニノが言うように事実だし。
でも翔が望んだことじゃないんだよな、って思うと…
「可哀想だと思ったんだろ」
「ん、まぁちょっとな。
でも潤さんが拾ってくれてなければ今の翔の生活はなかった訳だし
翔も潤さんに感謝してるし…」
「人生、何が正解かなんて後になってからじゃなきゃわからない、ってね。
数年後、翔が幸せになってたら、潤との出会いは決して悪いものじゃなかったってことでしょ?」
「そうだな…」
ニノの言う通りだ。
潤さんに拾われたから今の翔がいる。
翔が可哀想かどうかは、この先の翔の人生次第なんだから、翔を哀れむ必要はないんだ。
それよりもこれから先の翔の幸せを願おう。