第4章 子犬のワルツ
「いや、でも…」
翔が困っているとニノが翔の肩に手を置いた。
「折角こう言ってくださってるんだから作って差し上げて?」
「ニノさん…」
「ほら、マスターもいいって言ってるんだし。ね?作ってよ」
そう言われても不安そうな表情をする翔。
「大丈夫…智が教えてくれるから」
「え?俺?」
「当たり前でしょ?
翔の教育係りは智なんだから。
それにさっき自分でも言ってたじゃん、翔にカクテルの作り方教えたいって」
「言ったけど…」
「智…教えてくれる?」
翔が俺の様子を窺うように聞いてきた。
そんな不安そうな顔するなよ、もう…
「いいよ、教えてやる。
俺が教えるんだから、不味いカクテルなんて作らせねぇからな?」
「うんっ、ありがとう智」
「なんか俺が作ったカクテルは不味いみたいな言い方だな」
「そんなこと言ってないだろ」
「そうですよ、マスターのカクテルは何でも旨いです」
「ありがとうございます、相葉さん。
でも今日は、翔の作ったカクテルがご希望なんですよね?」
「あ、えっと…はい、すみません…」
「いいえ…こちらとしては助かりますよ?
丁度、翔にカクテルの作り方教えようとしていたところなので
翔のカクテルを進んで飲んでいただけるお客様はありがたいです」
「そうですか?じゃあ沢山注文しようかな?」
「そしたらまた、翔に水を出されると思いますけど?」
「ははっ、そっか。でもそれならそれでもいいかな
飲みすぎてたら自動的に止めて貰えるんだから」
「でも相葉さんにだから出来るんですよ?
他の方にそんなことやったら怒られてしまいます」
「そうかぁ…でもむかしから言うでしょ?
酒は飲んでも飲まれるなっ、てね。
だから止めて貰って正解」