第4章 子犬のワルツ
「でさ実際問題、相葉さんなら大丈夫なんじゃない?
潤のように強引な行動には出ないだろうし
何よりも優しいから、安心して任せられると思うけど?智パパ」
「誰がパパだっ!」
「自分で言ってたんじゃん、育てるって」
「まぁ、言ったけどさ…
でもいくらいい人でも心配は心配だぞ?」
翔には幸せになって貰いたいし
ちゃんと納得した相手じゃないと…
なんだか俺、娘を持つ父親みたいだな。
「え~、だって智『相葉さんいい人だぞ』って俺に勧めたじゃん。
俺にはいいけど、翔には駄目なわけ?」
「いや、駄目って訳では…」
気になるとすればニノから翔への乗り替えが早い点だけど…
でもニノが言ってたよな、『憧れてるファン』だって。
でも翔の場合は?
真剣に恋愛対象として見てるのか?
翔のやつ『心』がないって言うけどさ
警戒『心』まで無さそうだもんな…
潤さんについていっちゃうくらいだし…
それに素直だから、相葉さんのような誠実な人に本気で好きだって言い寄られたら、断れないんじゃ…
「…とし…智ってばっ!」
「へっ?」
「さっきっから呼んでるんだけど
なに険しい顔してんの?」
ニノが俺のことを軽く睨んでる。
「あ、ごめん」
「俺に謝罪はいいから、お客様のオーダー聞いてよ」
いつの間にか俺の前に座ってる二人組の女性客が、クスクスと笑ってる。
月に何度か来店される常連客だ。
「あ、すみません…」
「いいえ、大丈夫ですよ」
謝るとふたりとも笑顔で対応してくれた。
よかった、いいお客様で。
こちらが悪いとしても、嫌な客だと謝っても許してくれないからな。
「オーダーいいですか?」
「はい、どうぞ」
「えっとぉ、私はアプリコット・フィズお願いします」
「じゃあ、私はエンジェルズ・キッスで」
「畏まりました…少々お待ちください」