第4章 子犬のワルツ
「こんばんは、もう大丈夫ですか?」
「いらっしゃい相葉さん。どうぞ」
「表の看板がついてなかったから、まだなのかと思っちゃった」
「あっ、そうだ。
すみません、つけ忘れてました」
ニノが慌てて電気をつけた。
「今日は翔くんお休み?」
相葉さんがいつもの席に座るとキョロキョロと店の中を見回した。
「いえ、居ますよ」
ニノが看板の電気をつけた後、カウンターの中に入ると相葉さんの前に立った。
翔が店に来た初日
ニノが相葉さんが翔のこと気に入ったみたいと言っていたのは本当らしく
相葉さんは来店すると翔に声を掛けるようになった。
「あ、こんばんは。相葉さん」
店の奥から翔が姿を表すと相葉さんは嬉しそうに微笑んだ。
「こんばんは、翔くん。
姿が見えないからお休みかと思っちゃったよ」
「準備に手間取ってしまって遅くなりました、すみません」
「いや、謝らなくて大丈夫だよ?
ただお休みだったら寂しいなって思っただけだから」
相葉さんの翔を見る目がやたらと優しくて『おいおいニノはどうしたんだよ』と突っ込みたくなる。
「相葉さん、今日は何飲まれます?」
ニノがオーダーを聞くと相葉さんは翔の方を見た。
「何にしようかな?
翔くんは何が好きなの?」
「ごめんなさい。俺あまりカクテル飲んだことなくて…飲んだことあるのはジントニックくらいしか」
「そっか、まだ二十歳になったばかりだもんな…
じゃあ俺も久しぶりにジントニック飲もうかな」
「え、でも相葉さん俺より詳しいんですから、お好きなの頼んでください」
「ううん、ジントニックでいい。
その代わり翔くんが作ってくれない?」
「えっ⁉無理です!俺カクテルなんて作ったことない」
「だからいいの。
俺が翔くんの初めての客になる」
相葉さんが翔に向かってニコッと微笑んだ。