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きみに届けるセレナーデ 《気象系BL》

第4章 子犬のワルツ


「智の歌ってはじめて聴いたけど、上手いんだね」

「は?あんなの、歌って言えないだろ」

「ううん、俺も吃驚したよ?
あんなに綺麗な声で歌うなんて」

翔が少し興奮気味に話すけど、そんな大したもんじゃねぇだろ?

「智が歌い出してから翔の音色も優しくなったし…
いい感じだったよ?
今度、店の営業中にふたりでやってみたら?」

「イヤイヤ、それはないわ…
誰がこんな鼻歌聴いて喜ぶんだよ」

「そんなことないよ。
智の歌声凄くよかった…
ねぇ、もう一度聴かせてよ」

こんな風に翔がお願いするのも珍しい…
いや、もしかすると初めてか?

「しょうがねぇなぁ…」

俺は翔の頭をクシャッと撫でた。

「ありがとう、智」

翔は鍵盤に指を置くと、顔だけ俺の方を向いた。

ゆっくりと優しく始まるピアノの伴奏…

翔の体が曲に合わせ揺れる。
前奏が終わるところで、翔が俺に向かって微笑んだ。

その合図で、俺はメロディをハミングで歌い出す。

それにしても、翔のこんな笑顔見るの俺初めてじゃねぇか?
いつもはちょっとハニカムくらいだったのに…

驚いて、危うく歌うの忘れるところだったぞ?

その後も翔の微笑みは消えることなく
演奏を終えるまで気持ち良さそうにピアノを演奏していた。

「凄いっ!智!ほんとに澄んだ綺麗な声…
普段の声から想像できなかったけど、高音も出るんだね」

微笑みどころか、満面の笑みの翔を見て
俺の方が嬉しくなった。

やっぱり可愛い顔してるじゃん。
ずっとそういう顔してればいいのに…

ピアノの演奏といい笑顔といい、このままにしとくのは勿体ねぇよなぁ…
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